中山蛙の雑物日記1
ドンコ釣りの思い出
五月五日 晴れ
子供の頃には、用水や川が住居のすぐ近くを流れていて、見よう見真似で魚と遊ぶのは、ごく自然のこれは成り行きであった。護岸されたところもせいぜい石垣だったから、すき間がたくさんあり、魚の隠れ家となっていた。ザリガニに鋏まれる恐怖と戦いつつ、そんなところに手を突っ込んで鰻を引きずり出そうものならば、暫くは英雄の称号を恣にできたものだ。勿論、ぶきっちょな僕とは無縁のできごとであった。
そんな僕でも浅い川に入って、生まれて間もない雷魚やギギを、手でそっと掬ったりした。それらは、警戒心を持つには未だ幼すぎるのか、ゆったりと泳いでいた。尤も、ギギに関しては鯰の子と思い、椀にした手の中で泳がせて、眺めていると「刺される!」と年長者が焦って教えてくれたりもした。魚を脅かしたりせず、唯泳がせている分には、胸鰭と背鰭の一番目にある刺に触らなかったらしく、刺されたことはない。
そして、僕には鰻は釣れなかったけれども、石垣の奥に潜んだドンコを、こんな仕掛けで釣るのが楽しかった。
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