中山蛙のレイス日記
2002年10月14日[タイムトンネル]
今年もタイムトンネルの季節がやってきた。
一日だけだから、季節というのは変だが、近づいてくると、何となくバイクの準備をしたり、スケジュールの調整をしたりで、やはし「季節」という印象なのだ。
もう第26回目になるタイムトンネル。今年は、なんと、あのデイヴ・ロウパーがやってきた。デイヴは、世界中のクラシックバイクレイスを、ティーム・オブソリートで走っているヴェテランライダーである。オブソリートの仕上げたマシンは速く、そしてデイヴはクラシックバイクライディングの達人なので、向かうところ敵なしと言っても、これは過言では無い。以前に見た写真からもっと「体格のよい人と勝手に想像していたのだけれども、身長は僕より遥かに高かったものの、極めて細い、痩せっぽちといっても怒られなさそうなくらいで、驚いた。何でかというと、彼とともに数々のヒストリィを持っているマシン(ティーム・オブソリートのマチレスG50)は、彼以外の誰にも始動できないという話を聞いていたからだ。
出場するマシンは、本国から持ってきた、CB72。フレイムはホンダの純正ではなく、イェットマンのスペシァルであった。細いパイプを使用したトラスフレイムは、本体だけだと20パウンドくらいらしい。マシンのコムプリート状態で115kgしかないというから、驚く他ないではないか。フレイムが随分新しそうに思えたので、デイヴに訊ねてみると、1964年製だとのこと。アメリカでは、当時よく使われていたそうだ。
その結果は、当然と言ってしまえば、それで終わるのだが、やはし速かった。文句無く一位でゴール。次の機会があれば、是非G50を持ってきて欲しいものだ。
で、僕の方はと言えば、フリィ走行でタンクの燃料を、走行終了1周前にきっちり使い果たし、コースに止まらないでピットイン。去年の成績で決まるスターティンググリッドがフロントロウの左から2番目。つまり、所謂2番グリッドである。押し掛けスタートは得意(このクラスだけ昔ながらの押し掛けスタートなのだ)のはずにも拘らず、スタートダッシュに出遅れてしまい、1コーナーに進入するまでに10台くらいに先行されてしまうが、毎周何とか少しずつ抜いて、5周目に最終コーナーで3台を牛坊抜きして、クラスで2位のポジションまで上がった。しかし、決勝をスタートしてから、何となくエンジンの吹けが良くない症状(吹けるときにはけっこう頑張ってくれるのだが、どうかすると吹け無かったりする)が、その周から如実になり、ラストラップの7周目のバックストレイトで、ついに抜いたばかりの3台にまた抜き返されてしまった。また、最終コーナーで仕掛けたけれども、今度はエンジンが吹けないままで、再度抜き返すことができないでゴール。残念ながらクラス(350以下)4位という不本意な結果に終わった。
燃料がカーブレターにちゃんと行って無い印象だったので、きっと燃料パイプにゴミでも詰まったと想像していたのだが、家に帰ってから調べてみると、カーブレターが少し動いていた。2本で止まっているネジの片方が緩んでいたのだ。おそらく、これで2次エアを吸っての症状であったのだろう。
しかも、締め直そうとしても、一向に締まらない。緩めて外してチェックすると、シリンダーヘッドにねじ込まれているスタッドボルトのネジ山が無い(!)ではないか。最後に締めた(僕では無い)ときにナメてしまったのか、材質がもう劣化していたのが振動で駄目になったのかは定かではないが、兎も角これが原因の一つであることは間違いがないだろう。フリィ走行のときに症状が出ていれば何等かの対処はできたのに、これがレイスなのである。
来年こそは、雪辱を晴らそう、と固く誓った僕であった。
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