アメリカにバックというナイフメイカーがある。ガーバーと並んで日本でも良く知られる、これは名前であろう。ビギナーからヴェテランまで、広く親しまれている110番フォールディングハンターは、あまりにも有名な存在でもある。 |
そして、110番よりもう少し優しいブレイドラインを持つのが、500番デュークだ。この500番に自由の女神記念モデルがある。ご存じのように自由の女神像は1982年から1992年にかけて、大々的な修復作業が行われた。そのときに、元自由の女神像の一部だった材料をメダリオンにして、ハンドル部に埋めこんだ限定版である。自由の女神がアメリカの玄関にたたずんで、100年のご苦労様を記念しての限定なのだ。 その中でも、500番はさらに特別のモデルがある。それはアメリカ人にとって特に感慨深い材料が使われている。開拓者として新大陸にやって来た人々が最初に訪れる場所、移民局。訪れた幾人もの開拓者たちが大いなる希望に胸ときめかしてたたく、新世界への扉。まさしくその扉そのものを、ナイフのハンドル材として使ってあるのだ。かつて、これほどまでにアメリカ人がアメリカ人たるねき郷愁を誘う材料があっただろうか。おそらく無かっただろうし、これからもこれ以上のものは、きっとあるまい。。 |
このナイフを手にとってみると、そういった思いが駆け巡り、日本人である僕でさえも何か感慨深いものがある。目の前にあるハンドル材の、この部分をノックした人はいるのだろうか。それは、どんな人だったろうか。この木は何人の人々を迎え入れ、広大な土地へと見送ったのだろうか…と。 |